
日本生活科・総合的学習教育学会とは?
日本生活科・総合的学習教育学会は、1992年に設立された日本生活科教育学会を母体として、2000年の総合的な学習の時間の誕生と共に現在の「日本生活科・総合的学習教育学会」として発展をしてきました。
創設以来、会員の約7割を現職教員が占め、「現場のための研究学会」として学会の運営を進めてきました。
毎年6月に開催される全国大会では、第一日目に各開催地の優れた授業実践に学ぶための「授業公開」と「研究協議」を取り入れ、第二日目には、最新の情報収集や生活科・総合的学習の原点を確認するための講演・シンポジウムなどが企画されるなど、よりよい実践づくりのための情報収集の場となっています。
この他にも、学会誌の発行や実践づくりに役立つ「実践ブックレット」の発行、地域研究会の支援などを行っています。
現在は日本学術会議から「日本学術会議協力学術研究団体」として指定を受け、我が国の教育学界における確固たる地位を築いています。
この機会にどうぞご入会いただき、支部の皆さんとまた全国の先生と一緒に生活科・総合的学習の実践を学んでみませんか。



神奈川支部紹介
相模原(柴胡の会)・萌芽塾・横浜(ゆずの会)・川崎・横須賀・平塚
日本生活科・総合的学習教育学会神奈川支部では、これまで6地区に分かれて、生活科及び総合的な学習の時間の授業研究を日々進めてまいりました。この度、令和5年度の全国大会の会場が神奈川県相模原市に決定したことに伴い、6地区合同の実行委員会を立ち上げ企画・運営・授業実践を進めております。
【神奈川支部の取組状況】
2020年9月5日 神奈川支部大会 会場:オンライン開催 担当:萌芽塾
2021年1月23日 神奈川支部大会 会場:オンライン開催 担当:平塚
2021年9月4日 神奈川支部大会 会場:オンライン開催 担当:横須賀
2022年2月7日 神奈川支部大会 会場:谷口台小学校(ハイブリット開催) 担当:神奈川支部実行委員会
2022年6月4日 神奈川支部大会 会場:谷口台小学校(ハイブリット開催) 担当:神奈川支部実行委員会
2023年1月31日 神奈川支部大会 会場:大野南中学校(ハイブリット開催) 担当:神奈川支部実行委員会
「はやぶさ(MUSES-C)」は、近地球型とよばれる小惑星「イトカワ」を探査し、小惑星「イトカワ」から表面のサンプルを地球に持ち帰るという快挙を成し遂げた探査機である。地球に持ち帰られたサンプルは、分析が行われ、小惑星の形成過程を考える上での新しい知見をもたらし、今後の小惑星探査における重要な指標となった。さらに現在、「はやぶさ2」は、「はやぶさ」後継機として小惑星サンプルリターンを行うミッションに挑戦している―。
「はやぶさ」は、多くのトラブルに遭遇しながらも、それを乗り越え目標を達成した。その姿は、私たちが様々な困難に立ち向かい、それを乗り越えつつ、新たな未来を創造していこうとする過程と重なるところがあるのではないだろうか。
「はやぶさ」のプロジェクトリーダーを務めた川口淳一郎氏は、ある講演の中で、「高い塔を建ててみなければ、新たな水平線は見えてこない。」と述べた。困難に向き合ったとき、先が見えない状況だからこそ、未来を信じ続けそれを乗り越えようとする姿勢が、新たな時代を創り上げていく子供たちに必要なのではないだろうか。また、「はやぶさ」のプロジェクトには、多くのプロフェッショナルが参加し、プロジェクトの成功を支えた。異なる専門性をもった人々が同じ目的に向かい、協力し合って挑戦し続けることも新たな時代を切り拓く子供たちにとって重要な要素となる。
このように、「はやぶさ」の軌跡やそれを達成したプロジェクトメンバーたちの姿から、我々が新しい時代を生きていく子供たちとともに創り上げていくべき学びが見えてくる。神奈川大会実行委員会は、それを「つながり合う学び」と定義し、大会のテーマとして掲げることとした。この「つながり合う学び」について、10の姿として整理する。
「つながりあう」10の具体

私たちがつながる
子供と子供の学び
がつながる
資質・能力
がつながる
教科の学び
がつながる
地域とつながる
子供の学び
がつながる
社会とつながる
未来とつながる
幼保小中高
がつながる
自分の心と
つながる
①【子供の学びがつながる】(学び方)
「子供の学びがつながる」とは、学びが連続し、発展していくことである。生活科においては体験活動と表現活動の相互作用を通して、総合的な学習(探究)の時間においては探究的な学習のプロセスを通して、子供の学びは有機的につながっていく。
学習問題や学習計画を子供とともに検討し、子供自身が見通しをもって活動に取り組むことが、子供の学びをつなげていくポイントとなる。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・総合的な学習で、必要感を感じながら、自分で計画を立て活動を実施していく姿。
②【子供と子供の学びがつながる】
「子供と子供の学びがつながる」とは、必要感を感じながら子供同士がかかわり、対話と思考の相互循環的なプロセスを通して、新たな気付きが生まれたり学習対象との関係が明らかになったりすること、さらには、子供自身が課題解決に向けて行動することなどである。子供同士で互いの考えを受け入れ合い、ときには批判的なやりとりも行いながら、集団としての考えや自分自身の考えを確かなものにしたり、新たな考えを創り出したりしていくことが大切である。生活科では,「伝え合い交流する」場面などで,総合的な学習(探究)の時間では,「情報収集」「整理・分析」の場面などで,子供と子供の学びがつながることが多い。
ただ単に子供同士の学びが結びつくということだけでなく、それぞれの学びが組み合わさったり互いの考えを補完し合ったりすることで、学びがより確かなものになっていくことが重要である。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・生活科(総合でも)で、友達と協力しながらある活動(対話も含む)を行う中で、新たな「知」に辿り着いたり創出したりする姿。
③【資質・能力がつながる】
「資質・能力がつながる」とは、各教科等で育成されてきた資質・能力が、ある場面において再現的・統合的に活用・発揮され、それが繰り返されることを通して、あらゆる場面で適切に活用・発揮されるようになることである。現行の学習指導要領において、全ての教科等の目標及び内容が3つの柱からなる資質・能力で整理されたことや、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力が示されたことで、我々教師は資質・能力のつながりを具体的に描きやすくなったと言える。とりわけ、生活科・総合的な学習(探究)の時間については、各教科等との「ハブ」の役割を果たしていくこととなる。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・3年生の総合的な学習において、生活科で獲得した資質・能力が具体的に発揮され、学びが充実していく姿。
④【教科の学びがつながる】(見方・考え方)
「教科の学びがつながる」とは、各教科等固有の見方・考え方が鍛えられるとともに、子供自身が教科学習の有意味性・有用性を実感することである。生活科においては、合科的・関連的な指導、総合的な学習(探究)の時間においては横断的・総合的な学習を通して、より効果的・効率的な学びにつながり、結果としてより確かな資質・能力が育成されていく。
ここでは、【資質・能力がつながる】ことと同様に、生活科・総合的な学習(探究)の時間が、各教科等との「ハブ」の役割を果たしていくこととなる。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・総合的な学習で、教科で獲得した力を発揮し学びが充実するとともに、その資質・能力がさらに高まったり有用性を実感したりする姿
⑤【地域とつながる】
「地域とつながる」とは、学びの場を学校に留めず地域に広げていくことを通して、自分自身が地域を構成する一員であることを自覚したり、自分なりに地域をよりよくするために関わろうとしたりすることである。生活科は、地域に根差し、児童の生活に根差す教科である。総合的な学習(探究)の時間は、地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用することが期待されている。このような学習を通して、地域に愛着をもって自分自身の暮らしを創っていこうとする子供を育成することが重要となる。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・生活科の学習(例えば内容(3)まちたんけん等)で、地域のよさを実感しそれを自覚的に表現している姿
⑥【社会とつながる】
「社会とつながる」とは、実社会に実践の機会を求め、活動を通して社会貢献をしたり、そこでの学びを通して自分自身が社会の中でどんな存在であるかを見つめ直したりすることである。この姿は、⑤【地域とつながる】の「地域」と同心円を描きつつ、より広範囲的・立体的な構造である「社会」を対象としている。社会に様々に存在する「正解のない問い」に対して、資質・能力を発揮しながら挑み、「最適解」を求めていく姿を目指していく。さらには、「社会とつながる」ことを通して、社会からの求めにも応えていく経験をし、未来社会の創り手の入口に立つような姿を期待したい。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・総合的な学習。職業体験や地域社会での活動を通して、自分たちが社会の中でどんな存在なのかを考えている姿。また、社会貢献をしている姿。
⑦【未来とつながる】
「未来とつながる」とは、生活科や総合的な学習(探究)の時間を通して、自己の生き方を考えるとともに、未来社会のあり方に対しても考えをもち、未来社会を創造する主体としての自覚をもつことである。さらに、SDGsやSTEAM、キャリア教育等とも関連付けながら、実社会における様々な課題と向き合い、学習対象や課題に目を向けるだけではなく、「自分の未来」や「社会の未来」をも思い描くような姿を期待したい。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・総合的な学習を通して、自己の生き方を考えている姿。
⑧【幼保小中高がつながる】
「幼保小中高がつながる」とは、生活科・総合的な学習(探究)の時間を軸にしながら、園種・校種を超えて、子供の発達を支える我々教師・保育者の考え方・子供の見方がつながることである。例えば、幼稚園・保育園等と小学校について、それぞれがアプローチカリキュラム・スタートカリキュラムといったカリキュラムが作成され、生活科がその「結節点」であるとされている。また、総合的な学習に関しても、小学校・中学校での探究的な学習を経て高等学校の総合的な探究へと系統的・発展的に質を高めていくべきことが明示された。「自律的な探究」と「探究の高度化」が重要となる高等学校の総合的な探究を見据えながら、探究的に学び続ける子供を育成していくことも必要となる。「子供は、有能な学び手である」という肯定的な子供観を前提としつつ、本学会の強みを十分に発揮しながら、子供の発達とそれに応じた学びについて考えていく。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・スタートカリキュラムで園での学びを土台にしながら、小学校で豊かな学びを達成している姿。
・中学校、高等学校の総合。これまでの学びを想起しながら、これからどんな学びをしていくべきか自覚的に考え実行している姿。
⑨【自分の心とつながる】
「自分の心とつながる」とは、学習を通した自分自身の変容をメタ認知するとともに、変容のみならず、その学習が自分にとってどのような意味があったのかを自覚することである。生活科は、自分自身についての気付きを大切にしており、総合的な学習(探究)の時間は、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目指している。どちらも「自分の心とつながる」ことが重要となる。さらに、生活科・総合的な学習(探究)の時間は、学習対象と繰り返し関わる場面が多く設定される。繰り返される対象とのかかわりは自分自身を投影する役割を果たすことにもつながり、必然的に自分自身と向き合う機会も増えてくる。このような機会を有効に活用しながら、自己有能感を高めるなど、子供たちが今も未来も幸せにくらすことができるように支援をしていく必要がある。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・自身の学びを客観的に振り返り、評価し、次の学びに向かって目標をもって歩んでいこうとしている姿。
⑩【私たちがつながる】
「私たちがつながる」とは、我々が所属や立場を越えて協力をしながら、生活科と総合的な学習(探究)の時間の実践や教育研究を行うとともに、生活科と総合的な学習(探究)の時間の充実・発展と普及に努めることである。我々神奈川支部は、「ゆずの会(横浜)」「川崎地区」「平塚地区」「横須賀地区」「萌芽塾」「柴胡の会(相模原)」という6つの地区で構成されている。各地区で独自の研究会等を行いながら、年に2回神奈川支部大会を開催し実践を基に高め合ってきた。これまで積み重ねてきた神奈川支部としての学びを発信するとともに、全国から参加してくださった方々との交流を通して、より質の高い実践・教育研究を目指していく。
★具体的な子供の姿を紹介するとしたら
・神奈川6地区が学びを交流し、子供の姿を軸足に置きながら、教師としての力量を高めあおうとする姿。