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勉強中の学生

関東地区小学校生活科・総合的な学習教育協議会 神奈川大会

​大会テーマ

​「つながり」「つぐむ」学びの創造

~主体的・協働的に探究する生活科・総合的な学習の時間~

1.大会テーマについて

(1)    社会的な背景
(2)    大会テーマについて
①    神奈川が積み上げてきた財産(「10のつながり」)
②    積み上げてきた財産を土台とした学び(「つむぐ」学び)
③    「つながり」「つむぐ」学びのイメージ図
④    生活科における「つむぐ」学び(相小研の授業実践より)
⑤    総合的な学習の時間における「つむぐ」学び(相小研の授業実践より)

2.課題別分科会テーマについて

主体的に探究する学び

協働的に探究する学び

探究的な学びの充実におけるカリキュラム・マネジメント

・具体的な子どもの姿

・主な手立て

・キーワード

1.大会テーマについて

「つながり」「つむぐ」学びの創造
~主体的・協働的に探究する生活科・総合的な学習の時間~
​(1)社会的な背景

 現在、我が国は、生産人口の減少、グローバル化、情報技術革新(人工知能AIの飛躍)など、社会構造の大きな変化に直面しています。そして、近年では新型コロナウイルスの感染拡大や未曾有の自然災害などが重なり、社会はますます混沌としています。このような状況は、変動
性、不確実性、複雑性、曖昧性の時代(VUCA時代)と言われるように、行先きが不透明で将来の予測が困難です。しかし、「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有
識者検討会 論点整理」(令和6年9月18日 文部科学省)では、この現状について「危機と捉える議論に正対しつつ、むしろ未来を切り拓く絶好のチャンスと考える」とし、「非連続的な変化が予想される未来に向き合って教育の在り方を考えていくことと、学校の現在の課題に向き合って連続的な今を生きる子供たちのよりよい学びや幸福を確かなものにしていくこと、よりよい教育を通じてよりよい社会の創り手を育てるという発想のいずれも大事にしながら今後の教育課程の在り方を検討する」必要があるとしています。
 つまり、現行の学習指導要領前文に示されている「一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値ある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすること」については、これからの教育の在り方を考える上で、引き続き重要になるということです。学び手である子供自身が「学びを創造」し、新しい時代を生き抜く力を獲得することで、未来を創り上げる担い手となることがこれからも期待されているのです。そして、このような「主体的な学び手」を育成する核となるのが、自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を育成することを目指す「生活科」であり、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標とする「総合的な学習の時間」であると考えています。

​(2)大会テーマについて

 このように将来の予測が困難な状態にある現在、解決すべき課題を見出し、自分たちの力で解決していくことができるような力を子供たちに育むためには、個別の知識を覚えたり、一つの教科に閉じた内容を学んだりといった学習だけでは不十分です。そこで、「自己の学びを支えるつながり」「他者との学びに関するつながり」「学びの環境を整えるつながり」の中で、その「つながり」を子供自身が何度も繰り返し意識したり、別のつながりに広げたりしながら、物事を多面的・多角的に捉え、よりよく解決しながら「納得解」「最適解」を見出していく学びを目指すために、大会テーマを「『つながり』『つむぐ』学びの創造」としました。

 

​①神奈川が積み上げてきた財産(「10のつながり」)

 これまでの生活科・総合的な学習の時間における様々な実践を整理・分析し、それらの中に見られた様々なつながりを「10のつながり」として以下のように整理しました。

 

①子供の学びがつながる  ②子供と子供の学びがつながる  ③資質・能力がつながる

④教科の学びがつながる  ⑤地域とつながる ⑥社会とつながる ⑦未来とつながる

⑧幼保小中高の学びがつながる ⑨自分の心とつながる ⑩私たちがつながる

 この「10のつながり」はそれぞれ独立するものではなく、重なりがあったり、連続性が見られたりと、互いに関連します。また、それぞれのつながりは、どれも一方通行であるわけではなく、子供自身が何度も繰り返し意識したり、別のつながりに広げたりすることができると、学習がより探究的になっていきます。このように、生活科・総合的な学習の時間において、「10のつながり」を意識しながら単元づくりや授業づくりをすることで、主体的・協働的に探究する子供を育成する質の高い授業につなげていくことができるわけです。そして、このような「つながり」を意識した多くの実践を神奈川の財産として、今日の生活科・総合的な学習の時間の学びに生かしています。

 

※「探究的な学びを実現する『生活・総合』の新しい授業づくり」発行  小学館

著者  田村学・齋藤博伸/監修

日本生活科・総合的な学習教育学会

第32回全国大会神奈川大会実行委員会/編著

※「探究的な学びを実現する『生活・総合』の新しい授業づくり」P21より→

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②積み上げてきた財産を土台とした学び(「つむぐ学び」)

 「つむぐ」という言葉は、本来、「綿や繭の繊維を引き出し、より(縒り)をかけて糸をつくる」という意味をもっています。この意味から転じて、「様々なものをより合わせ、1つのものを作り出す」こ とを指すようになりました。この考えをもとに、子供たちが様々なつながりを意識し、それを広げたり深めたりする中で、多面的・多角的に物事を捉え、「納得解」「最適解」を見い出していく学びを「つむぐ学び」と名付けました。

 「つむぐ学び」は、子供たちが課題に主体的に向き合い、多様な他者と協働しながら学びを創 造するプロセスです。これにより、探究的な学びを実現します。中央教育審議会答申では、人間の強みについて、人工知能と比較しつつ「多様な文脈が複雑に入り交じった環境の中でも、場面や状況を理解して自ら目的を設定し、その目的に応じて必要な情報を見いだし、情報を基に深く理解して自分の考えをまとめたり、相手にふさわしい表現を工夫したり、答えのない課題に対して,多様な他者と協働しながら目的に応 じた納得解を見いだしたりすることができるという強みをもっている。」としています。つまりは、「つむぐ学び」は、人間の強みである主体的・協働的な学びを最大限に活かし、人工知能にない、人間ならではの探究と創造を支える学びであると言えます。

③「つながり」「つむぐ」学びのイメージ図

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④生活科における「つむぐ」学び(相小研の授業実践より)

【単元名】内容(3)

もっと なかよし まちたんけん「めざせ!かみつるマスター!」(2年)

【「つむぐ」学びを支える手立て】

◯「上つるマスターをめざす」という具体の姿の共有

 地域の「ひみつ」をたくさん知っていることや、訪れたお店の人の「こだわり」を知っていることを「上つるマスター」として、子供たちがめざす共通の姿を設定しました。そのことで、活動に必然性が生まれ、より主体的になることをねらいました。目的が明確なので、協働的に学ぶ場面においても、より深い学びにつながると考えました。

◯生活科の学習過程を意識した学習計画

 生活科の学習過程を意識しながら、子供たちの学びを見取ることで、適切な支援ができると考えました。例えば、1回目の町探検で得たそれぞれの情報を伝え、振り返る場面でさらなる疑問、思いや願いを生み出せるように、子供たちのもう一度行って確かめたいという気持ちを見取り、「もっと聞きたいカード」を提示することで、連続する学びにつながると考えました。

【具体的な子供の姿(「つむぐ」学び)】

 1回目の探検を終えて、「子供用の靴は上履きだけで、大人用の膝に優しい靴が多いんだね。」

「14〜32cmの靴があるんだって。」など、店の図に様々な情報を書き込みながら子供たちは気付きを共有していました。そして、子供たちが問いをもち始めた頃に「もっと聞きたいカード」を提示することで、「じゃあ、サイズだけじゃない、大人の靴と子供の靴の違いを教えてもらいたいね。」という思いや願いが生まれます。そして、2回目の町探検では、お店の裏側にある書類を見せてもらったり、お客さんからもらった折り紙の話を聞いたりしながら、お客さんを大事にする思いや 地域から愛されている店であることに気付きました。

 

⑤総合的な学習の時間における「つむぐ」学び(相小研の授業実践より)

【単元名】「極めよう!広めよう!世界に一つだけの墨流し」(5年)

【「つむぐ」学びを支える手立て】

◯思考を深める板書の工夫(思考ツールの活用)

 自分たちの作品への評価(アンケート)を整理・分析する場面で、一人一人の分析を「色」「模様」に整理し、「良いところ」と「アドバイス」の視点で分析し、今後の方針を共通理解するために黒板に思考ツールを使って可視化しました。そのことで、「色」「模様」の分析をした考えをつなぐだけでなく、アンケートを見返しながら「加工の工夫」という新たな視点に気付けると考えました。

 

◯思考を深め広げる問い返し

 自分やクラスの考えの根拠をアンケートから捉えたり、アンケートの評価と作品の分析を往還させる問い返しをしていきました。そのことで、色や模様の「良かったところ」を具体的に捉えられたり、「アドバイス」から自分の作品への改善や更なる目標をもつきっかけとなると考えました。

【具体的な子供の姿(「つむぐ」学び)】

 アンケートの結果を自分たちの作品の分析とともに整理し、よりよい作品に仕上げるためにクラスで思考する場面では、子供たちが新たな価値に気付いていきました。「墨流しの作品で折り鶴を折って展示した○○さんの作品をよいって言ってる人が多いよ。」「今まで、自分たちは、『色』や『模様』のよさについて考えてきたけれど、『加工の工夫』についても大事だね。」など、アンケートを分析する中で、新たなよさに気付き、「色」「模様」「加工の工夫」という3つの視点を調整しながら作品づくりをすると、見た人に感動を届けられる墨流しの作品になるという新たな考えをもちました。

2.課題別分科会テーマについて

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関東地区小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会

神奈川大会実行委員会 実行委員長 時岡 良幸

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